2 テンゾウ










もうすっかり夜も更けているため、面会なんて出来る時間じゃないから
僕は窓から先輩のいる病室へと入り込んだ。
暗い部屋の中へと足を踏み入れると、「早かったね」なんて先輩の声が聞こえた。

「先輩…!」

慌ててベッドの回りを仕切っていたカーテンの中へと入ると
体を起こそうとして、どこか痛むのか。顔を少し引きつらせた先輩がそこにいた。

「・・・っ」

「寝てていいですから・・・」

辛そうに小さく呻いた先輩の背中を支えようと腕を回すと、
不意に先輩に抱きしめられた。
知らせを受けてからは、心配な気持ちしかなかった僕は
先輩に強く抱きしめられて、ずっと先輩に会いたいとばかり思っていた
気持ちをすぐに思い出した。
体中で先輩を感じて、さっきまでの寂しさが一気に満たされてしまう。
1ヶ月振りに感じた、この体の暖かさ。感触。本当に会いたかった。

「・・・会いたかった」

そして、僕がずっと思い続けていた事を、先輩が口に出してくれると
うっかり涙が出そうな程に嬉しくなり、愛おしい先輩の背中に腕を回し
力を込めると、その背中に包帯が巻いてある事に気がついた。
背中に傷?カカシ先輩が・・・?
僕は慌てて腕を離した。怪我の具合は?酷いのかな・・・

「先輩、背中・・・」

「あ〜・・・。ま、対した事ないよ」

先輩は何でもないように言って、僕を少しだけ引き離した。
先輩が僕を見る目はとても優しい。もうすでに胸がドキドキしている。

「そんな事・・・ないでしょう」

軽い怪我ぐらいで、痛みで先輩が顔をしかめたりする筈が無い。
それに上手く隠しているけど、呼吸がやや乱れている。
原因はチャクラ切れだけでは無いことは、明らかだ。
先輩が背中に傷を受けることなんて、通常では考えられないから
部下を庇ったりしたんだろう。

その姿が目に浮かぶようで、僕はほんの少し顔を歪めた。







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