しろいしか くろいしか 4










そう言って熱っぽい視線を向けられてから、ようやく気が付いた。
欲しいっていうのは、そういう意味で・・・。
って、そんな、急すぎる・・・!
だいたい僕はまだ何も言ってないのに。

「待っ・・・っ」

強引な人だと思った。・・・いや、先輩が強引なのは会った時からか。
にこにこ笑いながら、僕の返事を聞く前に何でも決めてしまうのはいつもの事だ。

拒もうとして先輩の肩を押さえていた手も、甘いキスで力が抜けてしまい
やんわり解かれてしまった。

「・・・っ!?」

キスに夢中になりすぎて気が付かなかった。
先輩の手がいつの間にかズボンの中に入り込んでいて、僕のに触れた。
戸惑う僕に構いもせず、ゆっくり扱き始める。

「っ・・・んん・・・」

苦しいのに唇を離してもらえず、頭がぼんやりとする。
先輩に一方的に与えられる刺激に、限界が近付いてるのが分かった。
・・・ていうか、早過ぎるだろ。

「んっ・・・、っ・・・!」

そして、危惧していた通りあっという間に達してしまった。
恥ずかしすぎる・・・こんなの。
息を整えながらそう思っていたら、ズボンを下着ごと脱がされて両足を持ち上げられる。

「えっ・・・ちょっ・・・先輩!?」
「ごめんね。俺も、ちょっと余裕が無いかも」

と、余裕が無いと言っておきながらも、にっこり笑う様子は余裕たっぷりにしか見えないんですけど・・・。
ていうか、この体勢!恥ずかし過ぎる・・・。

「ちょっと痛いかもしれないけど、我慢して」

その言葉を聞いて、この後されるであろう行為を想像してしまい体が固まる。
心の準備がまだ出来てない・・・ていうか、僕まだ先輩に好きって言ってないし、
先輩だって・・・。いやでも、僕の事好きだって言ってくれたんだから・・・それで充分・・・かな。

うだうだとそんな事を考えていたら、後ろの入り口に生暖かいものが塗り広げられた。
これって・・・さっき、僕が出してしまった・・・アレ?

「ぁっ・・・!?」

そんな事を考えているうちに、先輩の指がすぅっと僕の中に入ってきた。
背筋がぞくぞくするような不思議な感覚がする。

「痛くない・・・?」

と、片手で僕の両足を持ち上げたまま心配そうな顔で聞いてくる。

「痛くはない・・・ですけど・・・」
「大丈夫、すぐ慣れるから」

そう言って、差し込まれていた指を抜き差しされたら上擦った声を出してしまって、いたたまれなくなってしまう。
そして、入り口を解すように指の腹で中をこすられると、今まで感じたことのないような感覚が生まれて堪らずに体を捩らせた。

「あっ・・・っ・・・」
「ここ、気持ちいい?」

そう言って先輩はなんども、そこばかりを擦ってくるから
さっき出したばかりだというのに、再び射精感に襲われる。
自分の体なのに、どうなってるのかもう全く分からない。

「やっ・・・やめ・・・あぁっ」
「出しちゃっていいから・・・テンゾウ」

先輩はそう言って、指をもう一本増やした。
そのうえ、すでにもうはち切れそうな程に膨張した僕のに触れて。
少し動かされただけで・・・また僕は達してしまった。
そんな自分に呆然としながらも、まだ熱が収まらない事にびっくりしていたら、抜かれた指の代わりに熱い塊が入り口に押し当てられた。
こ・・・これって、先輩の・・・?

恐る恐る先輩を見上げたら、先輩らしくない余裕のない表情をしていて。胸が疼く。

「ごめん。俺やっぱり余裕ないみたい」
「え・・・ちょっと待っ・・・!」

ちょっと待ってと言おうとしたのに、言えなかった。
その熱い塊が中に押し込められて、声が出ない。

「・・・っ」

引き攣るような痛みが走るけれど、ぐっと堪える。
ぎゅっと目を瞑っていたら、上からふわりと優しく抱きしめられた。

「痛い?」

優しく囁くように言われて目を開けば、先輩が僕を見ていた。
その目は欲情の色をしていて僕は胸がいっぱいになる。
先輩に、好きって言いたい。

「・・・大丈夫です。先輩のこと・・・好きですから」

繋がっている部分から感じる、痛みとは別の甘い感覚に蕩けてしまいそうになりながら、途切れ途切れに言ったら。
先輩は一瞬目を見開いて、それから強く僕を抱きしめてくれた。

「・・・もっかい言ってよ」

と、嬉しそうな声で言われたら何度でも言いたくなってしまうけれど。
一度言っただけなのに、恥ずかしくて堪らない。

「そんな事、何度も言えません・・・っ」
「じゃあ何度も言いたくなるようにしてあげる」

耳元で甘く囁かれて、また心臓が跳ね上がる。
この人と一緒にいたら心臓がもたないかも・・・。
そんな事を考えている間に先輩は体を起こして僕の両足を掴んで開き、ぐっと熱を根元まで押し込めてきた。
そして、入り口のギリギリの所までゆっくりと抜かれるという行為を繰り返されると、何も考えられなくなるぐらいの快感が押し寄せてくる。

「あっ・・あぁっ」
「・・・気持ちいい?」

そう言って先輩は腰を動かす速度を早めて、何度も突上げてくる。
気持ちよすぎて、どうにかなってしまいそうで怖い。さっきみたいに抱きしめていてほしい。
両腕を先輩に向かって伸ばせば、掴んでいた僕の足を肩にかけて体を折り曲げて抱きしめられた。

「うっ・・・あ、あぁ・・・ぁっ」
「テンゾウ、好きだよ」

熱い声で何度も囁く声を聞きながら、ぎゅっと先輩にしがみつく。

「好きって、言って。テンゾウ」
「あ・・・んっ・・・っ!?・・・や、あ・・・っ」

突然、目の前が真っ白になってしまって何がなんだか分からなくなる。
多分さっき指で何度も擦られた所を先輩の熱い塊で擦られたせいだ。
体の中でじんわりと熱いものが広がっているのを感じる。
自分でも訳が分からなくない内に、また達してしまっていたみたいで・・・。
恥ずかしすぎて、隠れられる所があったら隠れたい。


抱きしめ合ったまま息が収まるまで抱きしめ合う。
余裕だと思っていた先輩の体も汗ばんでいて、嬉しくなった。

「・・・言ってくれないの?」

ふと先輩が体を起こして僕の顔を覗き込んできた。
その表情は今まで見た事のないような、甘くて優しいもので思わず僕は見とれてしまった。
こんな人が僕を好きだなんて・・・本当に信じられない。

「・・・好き、です」

恥ずかしいから呟くように言ったのに、先輩は嬉しそうに微笑んでまた僕を抱きしめてくれた。

「俺も」
「・・・今まで生きてきた中で、一番嬉しいプレゼントかもしれないです」
「ん〜・・・なんか俺が貰っちゃったような気がするんだけど」

困ったような感じで先輩は言う。

「プレゼント交換みたいでいいじゃないですか。
 ・・・それにしても本当に、あの時良い子にしてたって言って良かったです」
「そうだな・・・って、そういえばさっき言ってた片想いしてる人って、もしかして俺?」


少し驚いたように僕の顔を覗き込んだ。
そんな話もしたっけ・・・。
なんか、だんだん眠たくなってきた。
先輩の、低くて甘い声がそうさせてるのかな。
いや、それ以前に酔ってたうえに、あんな事しちゃったんだもんな・・・と、さっきの行為を思い出して体中熱くなる。

「・・・はい。先輩が黒い鹿に持っていかれなくて、本当に良かったです」
「あ〜・・・はは。ほんとだな」

と、先輩は何故かしどろもどろになりながら答える。

「でも、なんで鹿だったんですかね?」
「そんなのクリスマスだからでしょ」
「・・・?クリスマスは鹿じゃないですよ。トナカイです。先輩知らないんですか?」


あぁ・・・先輩ともっと沢山話したいけど、もう限界かも。眠い。
何か話してくれているけれど、先輩の声がふわふわと響くのがすごく心地よくて、
僕はそのまま深い眠りについた。
抱きしめてくれている腕の温かさを感じながら。



おしまい







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