テンゾウが出て行った窓を、どれだけ見つめていたんだろう。
気付けば外は白く、明るくなっていた。
任務にでも出ていたら、
いくらかはテンゾウに会えない寂しさを紛らわせられたのに。
起こしていた体を横たわせると、背中の傷が痛んだ。
チャクラ切れを起こしているせいで頭もぼんやりする。
とりあえず今は休んで、早く任務に出れるようにしたい。
*
あれから、一ヶ月経った。
少しづつ暖かくなってきて、俺の体もほぼ元通り。
今は鈍ってしまった体を鍛え直すために、
修行という名のリハビリをしている。
テンゾウが帰ってきたときに、
あの日のような、心配そうな顔は見たくない。
俺の事が心配そうで、寂しそうだったテンゾウを思い出した。
笑ってる顔が見たいんだよね。
本当、早く会いたいなあ。
夜は、テンゾウのことを思い出して、
ふと寂しくなったりするけど。
任務の時の、真剣な表情だとか、
背筋が伸びるような佇まいを思い出して。
あいつの頭の中はきっと、任務の事だらけなんだろうけど。
そのほんのちょっとの隙間で、
一生懸命に俺の事を想ってくれているから。
テンゾウの全部が欲しいなんて言えないのは、俺自身がそうだからかな。
*
そして、早朝。
昼は暖かくなってきたけど、朝は冷え込む。
もちろん俺はまだぐっすりと眠っていたのだけど、
ふとテンゾウの柔らかな気配を近くに感じて目を開ける。
「すみません…こんな朝早くに」
あぁ・・・やっぱり、テンゾウがいる。
いつからそこにいたんだろう?
暗部の恰好のままのテンゾウが、
ベッドの傍にある机の椅子に腰を降ろしていた。
栗色の柔らかい髪が、朝の光りに透けている。
光りが眩しくて、俺は目を細めた。
「今、帰り?」
起きたばかりで頭がまだ上手く働かない。
「少し顔を見てから着替えに帰ろうと思ったんですけど、
先輩の顔を見たら帰れなくなっちゃいました」
テンゾウがそう言って立ち上がり、苦笑いをする。
「気配、消してた?」
「少し。でも、部屋に入って来たのに、先輩が気付かないなんて
まだ体の調子、悪いんですか?」
「体はもう大丈夫。
テンゾウの気配に体が安心しきっちゃってるだけだよ、多分」
それはそれで、問題有りか。
「それならいいんですけどね。・・・先輩、やっぱり僕一度帰って
着替えてきます。少しですが、返り血も付いてますし・・・」
1ヶ月の任務だったというのに、疲れを微塵も感じさせない雰囲気。
しょっちゅうチャクラ切れ起こして入院している自分が情けなく思える。
目を使うと、チャクラをかなり使ってしまうから、テンゾウにも
あまり使わないようにしてくれって言われたりするんだけどね。
体が勝手に動いてしまうというか・・・。
「俺の服でいいでしょ。もう起きたし、シャワーも使っていいからね」
「すいません・・・じゃあ、シャワー借ります」
「でも、その前に」
ベッドから降りて、俺はテンゾウの体を抱きしめたら
テンゾウの匂いに混じって、微かな血の匂いがした。
「おかえり。怪我とか、してない?」
「はい。・・・先輩、服が汚れちゃいますよ」
「いい。ずっと待ってたんだから、一秒だって待てない」
*